2021年5月20日、人気漫画『ベルセルク』の作者である漫画家、三浦健太郎氏が急性大動脈解離によって亡くなっていたことが発表されました。
18日の田村正和の逝去や、19日の星野源と新垣結衣の結婚と比べるとニュースでの扱いが小さいものの、個人的にはそれら2つが完全に吹っ飛ぶほどの大ニュースで本当にショックでした。
既に引退済みの田村正和(77)は年齢も年齢なので、遅かれ早かれいつか亡くなることは分かっていました。
また、星野源や新垣結衣の結婚も2人の年齢を考えれば不思議はありません。(この2人がくっついた、という点がファンの人にとって重大な関心事で話題を呼ぶのは分かりますが)
『ベルセルク』を知らない人からすればその2つと比べて今回のニュースは「三浦健太郎って誰?ベルセルクって何?その辺の漫画家の一人が亡くなったくらいで何を大袈裟な・・・」と思われるかもしれません。
しかし、ベルセルクのファンからすれば今回の三浦健太郎の死はあまりにも突然の出来事。
本当にショッキングな知らせでした。自分もまさか著名人の訃報でここまで落ち込むとは思いませんでした。
サブカル界隈にどっぷりな人間からしたら今回の訃報は近年まれに見る大・大・大!ニュースです。
この知らせは国内だけに留まらず海外でも大きな波紋を呼び、各国のTwitterでも「berserk」「miura kentarou」などがトレンドに入るほどのインパクトを与えました。
漫画家の死でいえば個人的には手塚治虫や赤塚不二夫、やなせたかしの訃報以来の大事件だと思っています。
そこで、今回は漫画『ベルセルク』の作者、三浦健太郎の突然の訃報がサブカル界隈の人間にものすごい衝撃を与えている理由についてまとめてました。
※主にベルセルクを読んだことがない人向けの内容です。
Contents
漫画『ベルセルク』とは
『ベルセルク』とは1989年からヤングアニマルで連載されている30年以上続く長編漫画です。(2021年現在、40巻まで出版)
超ざっくりストーリーを紹介すると、主人公のガッツがグリフィスという男に復讐を果たすべく化物を倒しながら旅をする、というダーク・ファンタジー作品です。
連載から32年で累計発行部数は4000万部。アニメ化はもちろんのこと映画化やゲーム化など、様々なメディアミックスをされるほどの人気作品です。
ゲーム、『ファイナルファンタジー7』や『ダークソウル』『モンスターハンター』等々・・・
ベルセルクが後世の作品に与えた影響は極めて大きく、国内だけに留まらず海外でも極めて高い評価を受けていました。
発行部数4000万部という数字は2021年時点での漫画歴代発行部数ランキングでは61位。
1位の『ワンピース』4億8000万部や7位の『鬼滅の刃』の1億5000万部と比べると小さい数字にも見えます。
しかし掲載が知名度の高い少年誌ではなく超マイナーな青年誌で、かつエログロ何でも有りの子供には見せられない過激作品であることを考慮するとこれは驚異的な数字です。
ベルセルクと他の漫画の比較
漫画作品が連載している最中に作者が亡くなり未完で終わるケースは実は結構あります。
有名どころでは手塚治虫の『火の鳥』や石ノ森章太郎の『サイボーグ009』など。
近年では『ちびまるこちゃん』のさくらももこや『クレヨンしんちゃん』の臼井儀人も立て続けに亡くなり世間に衝撃を与えました。
実はベルセルクは非常に緻密な絵のため休載だらけで、漫画好きの間でも『完結するより先に作者が亡くなり未完で終わるであろう漫画』の一つとしてよく挙げられていました。
この『完結する前に作者が死ぬ系漫画』には他にも様々ありますが、それらと比較することで今回の三浦健太郎の訃報がサブカル界隈に大きなショックを与えた理由が見えてきます。
ベルセルクと他の未完で終わる(であろう)漫画の違い
実は完結する前に作者が死ぬであろうと予測されてい漫画は他にいくつもあります。具体的には
- ガラスの仮面(美内すずえ)
- ファイブスター物語(永野護)
- NANA(矢沢あい)
- HUNTER x HUNTER(冨樫義博)
- バガボンド(井上雄彦)
- ヒストリエ(岩明均)
- BASTARD(萩原一至)
などなど。
もっと挙げ出せばいくらでもありそうですが、キリがないのでこのくらいで。一つづつみていくとこうなります。
ガラスの仮面 (美内すずえ)
作者の年齢が70歳。最新刊が2012年に出て以降、9年間も音沙汰無し。読者が完結をもう諦めている。
ファイブスター物語 (永野護)
作中で年表が公開されているので作品の結末は分かっている。
NANA(矢沢あい)
2009年から作者療養につき休載。以降、音沙汰無し。読者が完結をもう諦めている。
BASTARD(萩原一至)
2010年より休載。以降、音沙汰無し。作者が作品をもう投げている。読者も完結を諦めている。
HUNTER x HUNTER(冨樫義博)
今やっているのは作品完後の延長戦。作者が過去に作品をブン投げたことがあるので読者も覚悟はできている。
バガボンド(井上雄彦)
史実を元にした歴史漫画なので、おおよその結末は分かっている。
ヒストリエ(岩明均)
同上。史実を元にした歴史漫画なのでおおよその結末は分かっている。
このように、作者死亡→未完で終わるであろう作品の多くは、「色々な意味で既に終わっている作品」or「作者死亡で今すぐ終わっても諦めがつく作品」のどちらかに分類されます。
ここに、今回の訃報があれほどまでにファンを悲しませている最大の要因があります。
三浦健太郎の突然の訃報はなぜここまでファンに衝撃を与えたのか
『ベルセルク』は、連載が進むにつれどんどん絵が緻密になっていき、休載もどんどん増えていきました。
これはベルセルクの連載した回と休載した回をまとめた一覧表です。
下にいくにつれ、どんどん×が増えてますね…
しかし、進行が遅くなっただけで作者の三浦健太郎は作品を投げたわけではありませんでした。非常にゆっくりですが、物語は少しづつ進んでいました。
それに最近は20年近く抱えていた作品内の難題が遂に解決されストーリーも大きく動いてきたことで、読者の熱も戻ってきて界隈は大いに盛り上がっていました。
作者も亡くなる1か月前の対談で「これからは広げずに畳もうとは思ってる。」と言っていたばかりです。この言葉に往年のベルセルクファンはどれだけ心躍ったことか!
今の連載ペースでは到底完結までたどり着けないことは誰もが分かっていましたが、作者はまだ54歳。亡くなって未完で終わるにのはまだ10年や15年は先だと思っていました。
そこにやってきた突然の訃報。ただただショックという他ありません。
『ベルセルク』の作者、三浦健太郎の突然の訃報がどうしてここまで世間に衝撃を与えたのか。色々な要因がありました。
- 作品自体がものすごく魅力的だった
- 作者のやる気が十分にあった
- 近年は物語が大きく動いて読者の熱も上がっていた
- 作者死亡による未完で終わるにしても、それはまだずっと先のことだと思われていた
- ストーリーものなので一話完結型作品のように作者不在で回すことができない
- 仮に作品の今後の構想メモのようなものがあっても絵が緻密すぎるので代わりに描けるような漫画家がいない
上の方で作者死亡によって未完で終わる作品は「色々な意味で既に終わっている作品」or「作者死亡で今すぐ終わっても諦めがつく作品」のどちらかに分類される、と書きました。
その観点でいえばベルセルクはどちらでもありませんでした。
作品は今も生きていて、作者がいま死ぬとは考えにくい。しかし死んでしまった・・・
それが、今回の訃報で多くのファンが嘆き悲しんでいる一番の理由だと思います。
自分も好きな作品がノリにノッている最中に作者死亡により未完、というのはこれが初めてなので、相当堪えました。本当に無念です。
自分はあまり音楽に興味がないのでピンときませんでしたが、尾崎豊やHIDEの死を嘆き悲しむファンの気持ちが今なら少しは理解できるような気がします。
現在日本に漫画家は数千人いるそうですが、世界規模でみれば今回の三浦健太郎ほど、訃報が惜しまれる漫画家は恐らく他にいないでしょう。
ベルセルクはとても面白い漫画 ぜひ読んでみよう
ベルセルクは30年以上も前に始まった作品ですが、圧倒的な画力の高さ、物語の構成力、登場人物の超繊細な心理描写など、どれをとっても超一流。
本作を読んだことがない、今回の訃報で作品にちょっと興味が沸いてきたという人はこれを機にぜひ読んでみて下さい。
現在連載している漫画にも全く引けを取らず、その完成度の高さは今も全く色褪せません。あまりの面白さにビックリすると思います。
また、ベルセルクはアニメ・ゲームの劇中歌を平沢進が担当していて、もう気が狂うほどカッコいい名曲揃いばかりなのでそちらもおススメです。
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